「マーサの幸せレシピ」
 原題「Mostly Martha」 監督 サンドラ・ネットルベック  出演 マルティナ・ケデック セルジョ・カステリット 2001年 ドイツ作品

 マーサはドイツ・ハンブルグにあるフランス料理店のシェフ。仕事は完璧、きっちりとした性格でファンも多い。自分の腕に絶大の自信を持っているため、客とのトラブルも多い。でも、何かが足りない。人生の中に何かが欠けている。自分でそれをうまく気づけないでいた。オーナーからはセラピーに通えと言われているのだが、それも何のためなのかよくわからないでいた。

 そこに降ってわいたたった一人の姉の交通事故。娘を残して姉は死んでしまった。イタリア人の父親は行方がわからない。しばらくの間、心を閉ざした姪を預かる事になった。さらに店では陽気なイタリア人のマリオが新しい料理人として雇われていた。今までの自分の生活に突然入り込んできた新しい住人。かき回しながらも自分にかけていた何かがおぼろげながら見えてくる。


 食べることは生きること。生きるためには食べなければならない。この映画には食べない人が二人出てくる。一人は事故で心を閉ざしてしまった8歳のリナ。母を失い天涯孤独、その悲しみは余りある。死にたいわけではないのだが、どうしても生きる気力がわかない。その彼女がおいしそうにスパゲッティをほおばるシーンは秀逸。新たな生きる決意をしたように見える。

 もう一人がシェフのマーサだ。シェフのくせに食べない。かなりわがままだ。仕事中もしょっちゅうサボってる(としか見えなかった)。客商売をしているという自覚がない。いくら腕がよくてもやだ。仕事に絶大な自信をもつのと、仕事に責任をもつのは違うとこではないと思うのだ。実は自信を喪失していたのではないか。それこそ今年のテーマのアイデンティティ探しだ。アイデンティティを見つけたとき、おいしそうに食べるマーサがいた。

 レストランのメニューはドイツっぽく野暮ったくじゃがいもがごろごろしてたが、あのまかない料理のおいしそうなこと。ヨーロッパの料理の王様、イタリアにはかないません。でもイタリア人のマリオがイタリアを褒めながら、ドイツを愛してる最後に言うセリフがいい。どっかで見たことあるなと思ったら、「グラン・ブルー」の審判員のおっさんでしたね。

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